第2話「奥木頭の蒼」
奥木頭を流れる「那賀川」の美しさには、目を見張るものがある。
岸から広がる木々の葉と、空をうつしているからなのか、少し蒼みを帯びたガラスのように透き通った川の流れ。遊ぶように泳ぐ魚が面白いように見える。
木頭をはじめて訪れたとき、美しい自然は自然にあるようでそうではないことをこの川の色が教えてくれた。
少し下流に作られた2つのダム。
美しい流れは人の手によって寸断された。
堰き止められた水は淀み、濁り、大雨が降れば山から流出した木々が漂流する。
川底には堆積した土砂が積もり、水の量が減れば乾燥し、風の強い日には砂埃が舞う。
美しい川の面影はなくなってしまった…。
奥木頭に3つ目のダムの建設計画が持ち上がったとき、だから村の人の多くがダム建設に反対したんだと反対運動の先頭に立ったじいが熱く語ってくれた。美しい木頭の自然を、自然なまま残すために・・。
ダムとの戦いは30年におよび、村の人たちの暮らしはボロボロになっていった。それでも彼らはあきらめることなく反対し続け、最終的に計画を止めた。
そして今、美しい蒼い川が木頭を訪れた人を迎えてくれる。
大阪から移り住んだ人は「この川の色に惹かれて」と話していた。
横浜から移り住んだ人が「木頭Blue」という歌を歌っていた。
そして木頭を訪れた僕はいつも、森の霧が晴れ、山の間から朝陽が差し込むころにやっぱりこの川に会いに行く。
村のじいやばあが30年の月日をかけて守った「蒼い川」。その傍に立ち、その意味を全身で感じることから木頭での学びははじまるような気がしている。