先日とある飲食店で食事をしたときのこと。デザートの案内が「秋の実りデザート」に変わっていました。
メニューを開いてみると秋だけに栗を使ったものがたくさん。写真も綺麗で「うーん、美味しそうー!」ん?でも待てよ?考えてみたらいまはまだ8月末。栗の収穫時期は通常9月中旬ぐらいから。早いものは8月末から収穫できるものの、収量は少なく全国チェーンのお店に卸すほどはないはず…。
とすると、このデザートに使われている栗は少なくとも去年のものか、または輸入品ということになるのかな?まぁシロップ漬けや冷凍になっているから大丈夫なんだろうけど、それって「季節先取り」なのだろうか(^◇^;)?
日本っておかしな国だなぁと思うのが、「季節感」とか「季節先取り、旬先取り」や「季節の行事」などは大切にするのに「季節や旬そのものがいつなのか」ということにはあまり関心がないということです。そのことは年中行事の中によく現れています。
例えば1月7日の「七草粥」。
この時期八百屋にも「七草入荷しますかー?」と問い合わせがありますが、ちょっと待った!!落ち着いて周りを見渡してください。冬の真っ只中に春の草花はまだそこまで大きくなっておりませんよー(^◇^;)畑にあるのはスズナ(かぶの葉)とスズシロ(大根の葉)ぐらいですねーと毎年答えています。
七草粥は旧暦の行事なので本来は1月末から2月に行われるもの。この時期ならセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザなどの春の草花が芽吹く頃なので七草コンプリートできると思います(笑)
ちなみにスーパーに並んでいるのはどうやって揃えているんでしょうねー?と考えると無病息災を願う七草粥の本来の意味を考えてしまいます。
お次は3月3日の「桃の節句」。
桃の花が咲くのは3月下旬から4月に入ってから。つまり3月3日には梅は咲いていても桃はまだ咲いてません。
これも新暦と旧暦の違いで新暦ではだいたい4月になるんです。新暦3月3日に出回るのはハウスなどで加温してわざわざ蕾をつけさせているわけです。うーん、これもどうなんだろう…。
さらには7月7日の「七夕」。
織姫と彦星は会えるのかしら?と空を見上げてみるもののなんか毎年雲に覆われていて星見えないなーなんて感じていませんか?
それもそのはず!新暦7月7日は梅雨のど真ん中です。ちなみに梅雨は例年6月6日から7月20日ぐらいなので、この時期に空が晴れ天の川が見えることが奇跡!
ちなみに七夕も旧暦7月の行事なので新暦で言うと8月ぐらい。梅雨もあけたころなら織姫と彦星も出会えてめでたしめでたし(о´∀`о)
そもそも新暦が導入されたのは明治6年1月1日(1873年)からだそうです。この時に旧暦の月日に基づいていだものが日付だけ踏襲されてしまったようなのです。なのでこのあたりから日本人の季節の感覚はおかしくなってしまったのかもしれません。いまではそのことに疑問を持つ人も少ないような気がします。
それでも農家さんの中にはまだまだ旧暦で作業を行う方も多いですし、日本料理の世界では「走り」や「名残」といった形で魚介類や野菜の旬や移ろいを料理の中に生かしておられます。
ごはんを食べに行ったときに旬の魚介類と旬の野菜が組み合わされた料理がでてくると本当にホッとします。
季節の先取りはほどほどにして、本来の季節をしっかりと感じながら楽しみたいものだなぁと思います。